特定の音に過敏になる「ミソフォニア」と動きに過敏になる「ミソキネジア」
噛む音、叩く音、息をする音など、ある種の音を無意識に激しく嫌う「ミソフォニア」をご存じでしょうか。
ミソフォニアが一般に知られるようになったのは比較的最近のことですが、音ではなく動きに関連する極めて類似した症状として、ミソキネジアがあります。
ミソキネジアは、ある種の刺激(足の震えや指先の叩きつけなど、小さく反復的な動き)に対して強い負の感情を抱く人たちのための、オンラインサポートグループがいくつかあります。
そして、これまではこのミソキネジアに関する専門的な研究は行われていませんでした。
意外と多かった「ミソキネジア」の有病率
今回、ブリティッシュ・コロンビア大学のSumeet Jaswal教授らは、この認知度の低い状況を打破するために、ミソキネジアの有病率とその原因についての重要な事実を明らかにすることを目的とした一連の研究を『Scientific Reports』誌に発表しました。
ミソキネジアの有病率を把握し、今後の研究の可能性を探るため、研究チームはまず、パイロット研究を実施しました。大学の心理学科の学部生2751人を対象に、オンライン調査を実施し、2つのイエス/ノー形式の質問をしました。
1つ目は、ミソキネジア過敏症の有病率を測定することを目的とした質問。
2つ目の質問は、同様の内容ですが、音に関連するミソフォニアの一般的な誘因である、これらの種類の動作から発生する音について尋ねました。
その結果、38.8%の学生が、特定の動作に対して過敏に反応することがあると回答しました。
ミソフォニアの有病率はより高く、51.1%の学生が記述された内容に関連があると回答しました。
女性は男性よりもミソキネジア感受性を多く報告しました。(それぞれ43.1%対24.7%)
同様のパターンは、ミソフォニアの臨床患者にも見られることから、著者らは、この2つの質問が有効であると解釈しました。
ミソキネジアが一般の人々にかなり広まっています。
また、ミソフォニアとの併存が比較的多いことから、動作に対する突然の否定的な反応が、反応性の高まりと関連している可能性もあります。
また、ミソフォニアの研究では、脳の運動領域における「過剰なミラーリング」が患者の不快感の根本原因である可能性が指摘されているが、ミソキネジアもこれに由来する可能性があるといいます。
ミラーリングは共感性とも繋がりがあり、女性の方が一般に共感性が高い分この主張には納得できます。
今回の研究では、新たに確立されたテーマであるため、使用された尺度はやや探索的なものであり、妥当性のレベルは若干低いと思われます。
また、ミソキネジアを研究テーマとして確立するためには、質的な測定も含めたさらなる調査が必要となるでしょう。
まとめ
ポイント
・ある種の音を無意識に激しく嫌う「ミソフォニア」
・ある種の刺激(足の震えや指先の叩きつけなど、小さく反復的な動き)に対して強い負の感情を抱く「ミソキネジア」
・女性の方がミソキネジア感受性が高い
・「過剰なミラーリング」が不快感の根本原因である可能性が指摘