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実は3つある「許し方」の種類
今回、De Montfort大学のSaima Noreen氏が率いるJournal of Experimental Psychology: Learning, Memory and Cognitionに掲載された新しい研究では、加害者に対するさまざまな種類の許しが、不快な出来事を意図的に忘れようとしている人々にどのように効果があるかを具体的に調査しました。
「意図的な忘却」とは、その名の通り、不快な記憶を思い出さないようにすることです。
最近の研究では、それによってネガティブな感情が軽減されることが示されています。
Noreenさんたちは、「意図的な忘却」と、「決断的な許し」と「感情的な許し」の3種類の許しの間に起こる相互作用を探ることにしました。
「決断的な許し」とは、恨みを持ちながらも、加害者を許すことを決断し、復讐をせず、むしろ関係を維持する努力をすることです。
一方、「感情的な許し」とは、加害者に対するネガティブな感情を取り払って、ポジティブな感情に置き換えることです。
メンタルに最も効果的な「許し方」:嫌なことをイメージしてもらうVer.
研究チームは最初の研究で、オンラインの参加者に、「パートナーとの同居を控えた矢先に、パートナーの浮気が発覚する」というシナリオを示しました。
参加者は、この仮想的な不快な経験に関連する詳細情報(例えば、浮気相手を表す形容詞のリスト)を忘れるように促されました。
また、一部の参加者は、「感情的な許し」(「加害者が何かポジティブなことや癒しを経験することを願う」)か、決断的な許し(「加害者を悪い行いをした人と考え、その人に仕返しをせず、ネガティブな方法ではなくポジティブな方法で接することを決意する」)によって、加害者を許すように指示されました。
その他の人は、許しの介入をしませんでした。
研究チームは、「感情的な許し」をしたグループの参加者は、他のグループに比べて、悪い事の要点ではなく詳細を忘れていました。
また、これらの参加者は、犯罪からより心理的な距離を感じていると報告しました。
ただし、これらの研究は仮想的な犯罪を対象としています。
メンタルに最も効果的な「許し方」:実体験に基づく嫌なことVer.
最後のオンラインでの2段階の研究では、360人の新しい参加者を募集しました。
2つのセッションのうち、最初のセッションでは、身近な人が自分を深く傷つけ、怒りや憤りを感じるようなことをしたときのことを、詳しく書いてもらいました。
次に、その加害者をどの程度許しているかなど、その体験のさまざまな側面を評価しました。
その7日後から11日後に、参加者は2回目のセッションを受けました。
このセッションでは、これまでの研究と同じ3つのグループによる許しの介入が行われました。
研究チームの分析によると、これらの参加者にとって、決断的ではなく感情的な許しは、嫌なことの詳細をよりよく忘れていました。
ただし、その要点はやはり忘れていませんでした。
また、加害者に対してより多くの許しを感じると報告していました。
総合的に最も効果的な許し方
「今回の結果を総合すると、「感情的に許す」という行為は、嫌な出来事から心理的に遠ざけることにつながり、より抽象的なレベルで理解するようになることが示される」と研究チームは綴っています。
(つまり、嫌なことの大まかな内容は記憶しているが、詳細は覚えていないということ。)
この研究は、大きな人間関係のストレスがあった場合の、対処戦略として効果があります。
また、犯罪の被害者の心を回復するのを助けるための戦略にも効果があることがわかりました。
まとめ
ポイント
・意図的な忘却:不快な記憶を思い出さないようにすること
・決断的な許し:恨みを持ちながらも、加害者を許すことを決断し、復讐をせず、関係維持の努力をすること
・感情的な許し:加害者に対するネガティブな感情を取り払って、ポジティブな感情に置き換えること
・「感情的な許し」が、最も嫌な出来事から心理的に遠ざけることにつながり、出来事の詳細を忘れることができた